for Geo Engineers
更新日 : 2008年1月12日

GeoEngineer(地盤技術者)向けにオランダでの様子をお伝えします。レベルは学部2年生で地盤力学を勉強している程度以上の知識があれば十分です。(単位の取得は問いません)



一般向け シビル・エンジニア向け クイズに挑戦


GeoDelftからDeltaresへ
2008年1月1日よりGeoDelftからDeltaresへと組織が変更になりました。研究所の看板も変えられておりました。(5つ下をご覧ください)
Deltaresは、GeoDelftの他に、Delft Hydraulics、TNO(Built Environment and Geosciences )およびRijkswaterstraatが統合されて従業員800人を超える巨大な研究所となりました。オフィスはデルフトとユトレヒトに元の機関のまま点在した形でスタートとなりました。写真中央はホームページです。どうぞご覧ください。また、写真右のようなマンガのパンフレットも作成して一般の方にわかりやすくPRもしております。


サンプリングに行きました
研究用の試料採取に、アムステルダムの北のバールデンという町に行きました。近くにチーズで有名なエダムの町があり、大堤防で締め切られたマーカー湖に面した場所です。この場所はポルダーと呼ばれる方法で干拓が行われた場所で、湖の水位の方が地盤よりも高く、盤ぶくれによる被害が予想されているため各種調査や試験などが実施されているところです。
ジオデルフトは写真左にあるような地盤調査専用車両を保有しており、4名のフィールドテクニシャンの方が作業にあたられております。車内の様子は写真中央でわかるように各種計測器が配置されており調査結果もパソコンでリアルタイムに表示されるようになっております。写真右は、オランダで主流の直径65ミリのベッグマンボーリングの先端のカッター部分です。採取した試料は車内に引き上げられ、チューブに入れられて研究所に運ばれます。


ここにもありました
オランダ北部のフリースラント州の州都レーワルデンにあるオルデンフォーフェの斜塔です。ゴシック形式のずんぐりした高さ40メートルのこの塔は、1529年に教会として建設されたもののすぐに傾きだして教会としては断念したそうです。形状はデルフトの旧教会と同じように傾き始めてからも、鉛直にレンガを積み上げて建設しているため、バナナ型に曲がった建物になっております。傾きの様子は中央および右の写真のレンガの数を数えるとよくわかると思います。
この地区の地盤の詳細はこれから調べますが、紀元前から干拓が始まったそうで、おそらくピート層の上に3〜5メートルほどの砂地盤でしょう。私の出前授業(「ピサの斜塔の秘密〜構造物を支える〜」)の話題がまた一つ増えました。


オランダにも・・・。
オランダ南部のマーストリヒトに聖ピータースベルフの洞窟があります。この洞窟は20世紀までの700年間もの間建築用資材の泥灰石(マール石)の採掘が行われた場所で、洞窟の全長は200キロにもおよび迷路のようになっているそうです。採鉱夫たちが描いた壁画や第2次世界大戦中にはシェルターにも使用されたそうで、井戸やかまどなども見ることができました。なんと、オランダの誇る宝物であるレンブラントの「夜警」の絵画もここに隠されたそうです。写真中央は石を切り出している様子を描いた壁画で、パイプを加えながら石切をしているのは、気温が一年中10度と寒いため鼻を温めるためだそうです。その他には写真右地下道の地図も壁画として残っておりました。
クリスマスにはこの洞窟の中で、なんとがマーケットになるそうです。再び行く機会がありましたらまたリポートします。
すべてが平地だと思っていたオランダにもこのような場所があったんですね。



土留め工事(2)
土留め工事の鋼管をレポートしたところ、お2人からコメントをいただきました。
【会田さんのコメント】
@H型鋼よりも鋼管(中古生材)の方が手に入りやすい。
AH型鋼(同サイズ)で比較すると鋼管は断面係数が大きく,強軸,弱軸にとらわれず使用出来る。一般のH型鋼に対して,鋼管では約2倍!! しかし,最近中国の地下鉄でこのタイプの支保工が崩壊した様です。円形断面では腹起材との接合部が不良になりやすく問題があるようです。)
【中野さんのコメント】
ジャッキが無いということは、切梁寸法は一定で、矢板、腹起間の裏込で細工ですね。日本では、土のうに生コンをつめたり、キャンバー式、エア式の詰め物をし、施工中の変位観測、点検を継続します。
変位、変形にどう対処してるのでしょうか?また、腹起面との密着、鋼管のズレ止めは?日本ではH鋼なので、ブラケットで受けて、切梁の座りはよく、腹起へ軸力を伝えます。

コメントありがとうございました。

新しくクローズアップした写真を掲載しますが、やはり鋼管との接合部が弱点になりそうですね。爪で引っかけてあり溶接しているようでですが・・・。なお、会田さんはオランダで仕事をされた先輩からの情報も参考にコメントをいただきました。ところで、別の現場ですが、右側の写真は縦と横の切り梁が同じ高さで交差しておりました。中野さんからは上手く軸力を伝えられているかという不安も寄せられております。


ジオ・デルフト
デルフト地盤研究所(GeoDelft)を紹介します。私が4月から1年間の予定で客員研究員としてお世話になっておいる研究所です。オランダを代表するコンサルティング会社であり、様々な調査・研究・教育活動や国際技術交流も盛んに行われております。近くにあるデルフト工科大学Unesco−IHE研究所の学生が研究で在籍したり、オランダ国内の大学からインターンシップ等でプロジェクト活動に参加している学生もおります。また、日本の(財)地域 地盤 環境 研究所とも写真中央のとおりトンネル技術の技術交流をしていたり、中国の河海(Hohai)大学との交流(写真左)も行われております。わが日本大学もいずれ個人的にではなく組織的に技術交流ができればよいと考えております。


ロッテルダム空港
ロッテルダムの空港を利用して週末にイギリスに行きました。その際にロッテルダム空港の地盤沈下を視察して参りました。写真左と中央のラインを見ていただくと分かるとおり波打っております。ここは駐機場部分ですので離着陸には直接影響をしませんので補修されずに使用されておりました。滑走路の部分はさすがに路面も真っ直ぐになっており違和感なく離着陸することができました。空港の施設においても写真右に見えるように15センチメートルほどの段差があり沈下による影響が見られました。(あまり大きな声では言えませんが、もう少し沈下の状況が深刻ではないかと思いましたが・・・。)

デルフト名物
デルフトに初めて来たときには何も感じなかった市内の旧教会。左の写真をよく見ると何となく傾いていますよね!中央の写真を見ると途中からバナナ型に曲がっているがわかりますよね。右の写真で一目瞭然です。1200年頃に建てられたこの教会は軟弱地盤の有機質土の上に建てられたそうです。建設途中から傾き始めて、途中で真上にブロックを積み直しているのは、イタリアの「ピサの斜塔」と一緒ですね。私の出前授業のタイトルは「ピサの斜塔の秘密〜構造物を支える〜」で、高校の先生方に人気があり、これまでに5回ほど出張講義をいたしました。これからはさらに話題を付け加えますので、乞うご期待!!講義のお申し込みはこちらから(ただし2008年4月以降にお願いします)


典型的なオランダの地層
GeoDelftの実験室での一コマです。アムステルダム付近でボーリングサンプル(筒1本が1メートルの長さで左が地表面)ですが、これが典型的なオランダの地層だそうです。地表面から約3メートルが埋め立てた砂層となっており、その下に、旧地表面で沼地で堆積した有機質土(黒っぽい部分)となっております。さらにその下には海成の粘土と砂が層を成して堆積しております。砂層の分類には写真中央のような標本と照らし合わせて、粒径を顕微鏡で調べます。さらに、右の写真のように10℃の恒温室で乱さないサンプリング試料を保存して、後日、物理実験や力学試験などで特性を調べます。


デルフト市内の地盤沈下
道路の路面に亀裂が入っております。この部分は、盛土から橋梁に変わる取り付け部分で、橋梁部分は沈下を起こしませんが盛土部分は地盤が悪いと少しずつ沈下が生じて時間経過とともに亀裂が大きくなっていきます。写真中央は道路の反対部分の歩道を写したものです。レンガ部分が盛土側で、沈下しているのがわかると思います。右の写真は近くの建物を写したものですが、奥の扉の前のブロックが不自然に盛り上がっております。実は、盛り上がっているのではなく、その他の部分が沈下をしているのです。手前の扉の下がコンクリートブロックが使われております。おそらく奥の分には建物の基礎か埋設管等が入っているために建物と同様に沈下がないものと推測されます。このような沈下を「不同沈下」とよび、ライフラインの破損にも繋がります。

オランダの道路舗装
オランダの舗装はレンガを用いている道路(車道・歩道ともに)がとても多いです。理由としては、埋立地盤が多いために軟弱な部分が多く、補修することを考慮してのものと思われます。詳しくは分かりませんが写真左のようにレンガの並べ方にもいろいろと工夫があるようです(白線より手前は自転車専用道路)。また、バスレーンのタイヤ部分も他とは異なった並べ方になっております(写真中央)。右の写真のように地盤沈下が発生してくるとレンガの目の開きが大きくなり、路面に凹凸が現れ補修が必要となってきます。街中でよくレンガの敷設工事を見かけます。


発泡スチロールで軽量に
私の住んでいるアパートから撮影しました。商店街の床に発泡スチロールブロックを敷いているところです。もちろん上載圧を軽減するためと思われます。日本においても地盤沈下対策としてEPS工法として発泡スチロールが同じように利用されております。写真右のように発泡スチロールを敷き並べ、その上に鉄筋を置き、さらにミキサー車によりコンクリートを打設しておりました。我が家の目の前行われているで沈下対策の様子を見ることができました。


地中埋設ケーブル
通勤でいつも通る道で工事の標識が立っておりましたので、のぞいてみました。既存のケーブルに加え新しいケーブルを地中に埋設する工事の途中だと思われます。レンガブロックの下は砂地盤です。写真右の手前側をよく見ると細いケーブルが何本も直接埋設されていることが分かります。我が国ではケーブルをまとめてパイプ等に入れてから埋設するようですが、沈下によってゲーブルがとぎれたりしないか心配しております。日本では考えられない工事(?)であると感じました。


土留め工事
通勤でいつも通る道沿いから工事現場がよく見えます。ビルを建てるために、シートパイルと切梁で土留めをして躯体を構築しているところですが、オランダの山留めは鋼管を使うようです。ロッテルダム駅の地下鉄工事においてもやはり鋼管を用いておりました。日本でよく見かけるH型鋼と比較すると・・・・・。どなたかフォローをお願いします。
また、作業されている方のほとんどが工事用のヘルメットをかぶっておりませんでした。こちらも自己責任と言うことなのでしょうか・・。